レポート
【FORUM PRESSレポーター】
愛知県美術館サテライト展示 特別展「熊谷守一展」~木村定三コレクションより~
FORUM PRESSレポーターによる「わたしレポート」。
2017年4月22日~5月14日に開催した特別展「熊谷守一展」のレポートです。
FORUM PRESSvol.80にもレポートを掲載しています。コチラ(PDF)からご覧ください。
@文化フォーラム春日井・ギャラリー
Report207 熊谷画伯は仙人のようです こじま みつこ
春日井市の文化・スポーツ都市宣言記念事業の第一弾として、4月22日より文化フォーラム春日井にて、『特別展 熊谷守一展』が始まりました。開会式に続いて愛知県美術館の副館長・古田浩俊氏が、「熊谷守一のコレクター木村定三氏について」「作品を委託された愛知県美術館について」そして「熊谷守一氏自身について」を講演されました。
写実主義から流れるような線の表現主義、そして独自の様式へ。余計なものを一切省いて単純化した生き物や植物たちは、まるで俗世を離れた仙郷の住人たちのように感じられます。老年の熊谷氏も長いあごひげの仙人そのものです。写生の心得として「観察している間に対象物がぱっと消えなければならない」なんてやっぱり仙人の言葉です。
単純にもかかわらず生命感に溢れているからなのでしょう。描かれた生き物たちをジッと見ていると、怒っている様子の『猫』には背中を丸くして「フウッ」と威嚇したくなるし、この世の憂いなしとばかりにまどろむ『白猫』は、撫でて抱っこしたくなる気持ちが抑えられませんでした。
Report208 満ちた空白 ― 熊谷守一展 マエジマ キョウコ
『特別展 熊谷守一展』の初日だった4月22日、愛知県美術館副館長・古田浩俊氏による開会記念講演会「愛知県美術館、木村定三、そして熊谷守一」が催されました。出会ったとき、木村定三は20代、熊谷守一は58歳。歳の離れたふたりがどう親交を深めたか、木村定三と愛知県美術館とがどう関わってきたか ……。人の縁の不思議さを感じさせるお話でした。
講演会を聴いて書も見たくなり、春日井市道風記念館に行きました。そこで観た書は「言葉の意味がそのまま書になっている」と言えば伝わるでしょうか。守一が、身の回りのものを見て、感じたままが書として表現されているのです。心打たれました!
「満ちた空白」。熊谷守一の作品を観ていたら、そんな言葉が浮びました。「モリカズ様式」で描かれた絵画は、力強い輪郭に囲まれた面で構成されていますが、その面が単なる平面でなく、しっかりと質感を持っています。書もまた、余白が充実しているというか、みっしりと心に迫ってきます。
とても心に残る特別展でした。
Report209 ほっとできます 熊谷守一展 いいさかかおる
熊谷守一の『白猫』は猫が気持ちよさそうに寝転んでいる絵です。たった2色で単純ですが、きちんと描かれています。その凛とした姿に、守一の「生き物は人間と違って、ウソをいわないからカワイイと思う。人間のほうは、ものこころつくと、ウソをつくからイヤになってしまうんです」。という言葉を感じる絵でした。
今回の『特別展 熊谷守一展』は愛知県美術館のサテライト展示として開催されました。「書のまち春日井」の守一展だけあって、春日井市道風記念館では守一の書作品の展示がありました。4月22日の開会式典では伊藤太春日井市長から「春日井市は文化・スポーツ都市宣言をした。書のまち春日井を、絵も楽しめる文化都市にしていきたい」とお話されました。同日には開会記念講演会もあり、愛知県美術館副館長の古田浩俊氏が、愛知県美術館の木村定三コレクションなどについて講演されました。
心が癒される、ほっとできる『熊谷守一展』でした。