インタビュー

名作童話が大変身!
光と闇のマジック、to R mansionの「にんぎょひめ」

2020/06/06
テキスト=スタッフ 奥村加奈子 編集=スタッフ 山川愛
ことばの壁、劇場の壁、さらには国境も越え、メンバーたちの身体ひとつで、世界を舞台に活動するパフォーマンスカンパニーto R mansion。
そんな彼らが創作したのが、舞台「にんぎょひめ」。次々と仕込まれる笑いと、大人もうなる胸キュンなストーリーが織りなす感動作です。
今回は「にんぎょひめ」で、双子の人魚姫を演じる野崎夏世さん、上ノ空はなびさんに、作品の魅力をはじめ、いろいろなお話を伺いました。
左から、野崎夏世さん、上ノ空はなびさん、4/22にSkypeにて取材

優しくて繊細な、あらゆる世代の日本人に向けて

―海外での活動も多いto R mansionさん。印象に残っていることはありますか?

アフリカのコートジボワールでサーカスのフェスティバルに呼ばれたときのことです。まずワークショップで学校に行ったんですが、子どもたちは、私たちの存在そのものに対して「これが日本人なんだ!初めて見た!」と驚いていたのが印象的でした。あと、お客さんの笑いどころが違うんです。

―例えば?

アフリカの人達はすごくジェントルで、男性が女性に対してツッコミを入れることに対して、「押してる!叩いてる!」と感じるようで。力に対してのリアクションが大きいんです。なので、私たちも、現地に入ってからツッコミの手法を変えました。歴史的背景や国の文化によって、日本では普通でも、アフリカでは暴力的にみえてしまうんだと思います。笑えること、面白いことというのは、地域的で社会的なことなんだと実感しましたね。

―ヨーロッパはどうですか?

ラテン系のスペインやイタリアは、喜び方がすごく上手で、「楽しんでる!」というのを、身体で、声で、表情で伝えてくるんです。両手をあげ、身体を揺らして(笑)

―そういう意味では、日本人はシャイですか?

繊細だと思います。とても優しくて。食べ物の種類も多いし、四季の移り変わりもあるし。情緒を説明する言葉がたくさんあるから、伝えることには長けているんじゃないかなと感じます。

―今回の「にんぎょひめ」は、言葉と身体表現のバランスだったり、登場人物たちが抱える気持ちの面など、日本人ならではの繊細な感覚で作られた作品だといえますね。

はい。まさに!この作品は、あらゆる世代の日本人に向けて作った作品です。

© Chiye NAMEGAI

© Chiye NAMEGAI

美しさの多様性、たくさんのマジック!

―なるほど。この「にんぎょひめ」という作品には、下半身が魚の人魚姫と、上半身が魚の人魚姫が双子の姉妹として登場します。

原作の「美しい」「醜い」というテーマをもとに、全年代の人が楽しめて、感動できる、コメディにもなる作品を作りました。例えば、上半身が魚の人魚姫のお姉ちゃんは、一般的な「美しさ」ではないけれど、愛嬌や一生懸命さといった美しさがあると思います。日本人は特に、メディアが作り上げた「美しいもの」に 影響を受けがちですが、実はもっと多くの感じ方があってもいいと思います。人間の「美しさ」は、それぞれが生きていく中で、感じていくもの、作り上げていくものなのだと感じてもらえればうれしいです。

© Shinsuke Kotani

© Shinsuke Kotani

―原作の「人魚姫」のイメージと変わらず、でもオリジナルの脚本で、大人も子どもも楽しめてすごくいいなぁと思いました。そして、とても美しい舞台の仕掛けがいっぱいあるんですが、舞台はどのように作られたのですか?

脚本を元に、なるべく言葉に頼らない方法を模索しながら、キャスト全員でシーンを作っていきます。今回の作品では、稽古場に照明を吊って、明かりづくりも考えながら可能性を一緒に試していきました。光と闇で舞台上に照明でカーテンを引くような「テアトル・ノワール」というフランスの演出手法を取り入れているんです。

―まるで舞台全体が魔法にかかったような演出がすごく魅力的ですね。

舞台上の闇の空間の中に、お客さんからは見えない沢山の人と物が動いています(笑)。この闇の部分がマジックの成功に大きくかかわってきます。稽古で時間がかかるのが、この部分で、大勢のメンバーでマジックを成功させるためにはどうしたらいいだろう、と試行錯誤しながら作ったので時間がかかりました。

© Chiye NAMEGAI

© Chiye NAMEGAI

他の人の気持ちを知る、
それが劇場の素晴らしいとろ

―今回の公演は、たくさんの子どもたち、とりわけ0歳から入場できるようにしていますが、その“こだわり”を教えてください。

すべての人が楽しめる舞台でありたい。逆に、「この人は入れません」としたくなかったんです。赤ちゃんが泣いても劇場では優しい気持ちで、皆で楽しい時間にしましょうって、上演前に私たちから呼びかけをして、お客様にもご理解いただいて上演しています。上演前には、劇場の中が暗いとか、怖いと思ってしまうお子さんに対して、リラックスしてもらう時間も設けています。はじめて劇場に来るお子さんにも、びっくりするようなことがいっぱいあるよ。それって劇場ならではの楽しさなんだよとお声がけいただければと思います。

―上演中の子どもの声もスパイスですね。

お子さんたちが、思ったことを途中で声に出して言ってくれます。人と一緒に観るということが、作品を体験する時間をより豊かにするし、他の人の気持ちを知ることにもつながります。それが観劇の素晴らしいところだと思います。“生の絵本”を観るような気持ちで、お出かけください。

―最後に、メッセージをお願いします。

「にんぎょひめ」は世界中で活躍する様々なジャンルのアーティストが集まって、すべての世代の人間たちに贈る、とっておきのファンタジーです。劇場で皆一緒に笑ったり驚いたり、時に心キュッとなったり、声をだして楽しい時間を過ごしましょう!

© Chiye NAMEGAI

© Chiye NAMEGAI

スタッフのおすすめ
「にんぎょひめ」の公演で使われる音楽にも大注目!なかなか聞く機会のない様々な音楽を、to R mansionのメンバーがセレクトし、絶妙な演出で取り入れています。

そんなメンバーたちが「世界観が好き!」と仰っておられたのは、エミール・クストリッツア監督の映画作品。「にんぎょひめ」で使われる音楽には入っていませんが、1995年にカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『アンダー グラウンド』などを事前に見て、その世界観に浸ってみるのもおすすめですよ!
https://filmarks.com/movies/76746
https://eiga.com/movie/56942/

細田守監督の映画「バケモノの子」のサントラも出てくるかも? 音楽担当は、高木正勝さん。以前、文化フォーラム春日井で展覧会を開催してくださいました。当時の子どもたちは、だいぶ大きくなっているかな?
http://www.bakemono-no-ko.jp
https://www.kasugai-bunka.jp/archives/4339
to R mansionから、おうちで楽しめる動画が届きました!
こんにちは。to R mansionです。
5月はおうちで長く過ごされていた方が多くいらっしゃるかと思います。 運動不足がちょっと心配?
それじゃあ、心とカラダを踊らせて、to R mansionと一緒にダンス体操しませんか?「いちねんかんダンス体操」を創りました。歌って踊っているうちに、あらあら不思議!心とカラダは爽快に。 そしていつの間にやら和暦の月名を覚えてる?!(注)個人差があります。
子どもから大人まで、みんなみんな、普段着のままレッツゴー!座ったままでもできるダンス体操。映像には不思議なことが時々おこります。是非是非探してみてくださいね。

「いちねんかんダンス体操」

他にも2作品動画を創りました!こちらもお楽しみ下さい。
*おうちの中で、想像力で無限の想像の旅に出かけよう!#おうちねま

1. チャラン・ポ・ランタン×to R mansion 「空が晴れたら」

2. あの素晴らしい愛
お客様に会いたい気持ちを込めて創りました。

お会いできる日までどうかみなさまお元気でお過ごしください。その日を心から楽しみにしています!
プロフィール
to R mansion
(トゥーアールマンション)

野崎夏世・上ノ空はなび・丸本すぱじろう
© Chiye NAMEGAI
世界中の劇場や演劇祭で大人気のパフォーマンスカンパニー。パントマイムやダンス、影絵やマジックなど様々な表現と、日本で唯一彼らにしか実現できない「テアトル・ノアール」という照明と闇のしかけを使って、見たことのない舞台空間を作り出します。
あらすじ
大人も子どもも夢中の、めくるめく70分
海の底で暮らす双子のにんぎょひめ。上半身が魚の器量の悪い人魚《姉》と、下半身が魚の美しい人魚《妹》は、人間に憧れを抱きながら暮らしています。ある日、姉は難破船から海に落ちた人間の王子を助け、そのまま一目ぼれ!しかし、海岸で目を覚ました王子は、美しい人魚の妹にときめき、自分を救ったのは彼女だと思い込みます…。3人の関係はどうなっていくのでしょうか? アンデルセン作のにんぎょひめを元にした、0歳から200歳までのすべての人に送る、to R mansion版とっておきのファンタジー。親子で一緒に笑って泣いて、とびきり素敵な時間を楽しみましょう。

    公演情報

親子のためのファミリーシアター!
to R mansion にんぎょひめ

日時:

2020/8/8(土)10:30〜、14:00〜
※上演時間70分

会場:

春日井市東部市民センター

入場料:

おとな¥2,500 (PiPi会員¥200引)、こども¥500(高校生以下)
(税込、全自由席、当日券同額、3歳児未満ひざ上鑑賞無料ただし席が必要な場合は有料、0歳児からご入場いただけます)

※新型コロナウイルス感染予防に対応した座席配置となります。

発売日:

★PiPi会員Web&電話先行予約
2020年7月12日(日)9:00〜15日(水)17:00 ※13日(月)は休館日のためWebのみ
★一般Web会員先行予約
2020年7月16日(木)10:00〜18日(土)17:00
★一般発売 2020年7月19日(日)〜

イベント情報はコチラ

出演:

to R mansion
藤田善宏(CAT-A-TAC/コンドルズ)
Coppelia Circus
ヤノミ(小心ズ)
チャタ
佐川健之輔
遠藤昌宏

原作:H・Cアンデルセン
脚本:目次立樹(ゴジゲン)
脚本監修:松居大悟(ゴジゲン)
演出:to R mansion
照明:丸山武彦
音響:高塩顕 衣装:西川千明
総合演出:小島康嗣
舞台監督:川上大二郎
企画・製作:to R mansion

主催・問合せ:

公益財団法人かすがい市民文化財団
TEL:0568-85-6868

協賛:

サンマルシェ

助成:


文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会