本作は、2014年に製作されたフランス映画「エール!」を原作とした作品です。
両親と兄の4人家族の中でひとり耳が聞こえるルビーは、家族の“通訳”をし、家業の漁業も手伝いながら高校に通っています。高校の合唱クラブで歌の才能を見出され、都会の名門音楽大学への進学を勧められますが、彼女の才能を理解できない家族は、頼みの綱である娘と離れて暮らすことに不安を抱き、正直な思いを吐露します。家族にとっての自分の存在や使命感を感じつつ、自分自身の未来を歩みたいというジレンマと対峙するルビー。
互いを思いやりながらも家族それぞれが抱く複雑な感情や、体に不自由な部分を持つ人と暮らしていると生じるトラブルもリアルに描かれ、様々な場面で共感したり、気づかされたりするエピソードに出合うはずです。
卒業コンサートのシーンに、「聞こえないから理解できない」を払拭する感動的な場面があります。同時に、聞こえる私たちは「聞こえるから理解できない」を体感します。
温かい家族の絆とルビーの澄み渡る歌声が心に優しさを灯してくれる2022年アカデミー賞受賞作品です。