レポート
【FORUM PRESSレポーター】「白石加代子女優生活50周年記念公演『笑った分だけ、怖くなる vol.2』」
「FORUM PRESSレポーター」による「わたしレポート」。
市民ボランティアが、かすがい市民文化財団のアレコレを紹介します。
今回は、2017年11月19日(日)に開催された、「笑った分だけ、怖くなる vol.2」の様子を4人がレポート!
FORUM PRESSvol.84にもレポートを掲載しています。Report246はコチラからPDFでお読みいただけます。
@春日井市民会館(撮影:かすがい市民文化財団)
Report246 【怖くなるほどの才能のぶつかり合い】 のぐちりえ
才能と才能のぶつかり合い、そんな舞台でした。個性派俳優の二大巨頭と言っても過言ではない白石加代子さんと佐野史郎さん。その二人の舞台ですから、面白いに決まっています。案の定、期待を裏切りません。舞台上は白石さんと佐野さんのみですが、朗読される物語には何人もの登場人物が出てきます。その幾人かを、二人が帽子や上着を交換したり、立ち位置を替えることで演じ分けていきます。
第1ラウンド『乗越駅の刑罰』では、佐野さん演じる若い駅員が無賃乗車の客を殴ったかと思うと、1秒後にはその殴られた客を佐野さん自身が演じひっくり返る。駅員の帽子を被った白石さんが若い駅員役だったと思ったら、声色を変え中年の駅員になり、猫スープができたと言う……。次々に役が交錯し、観る側も気が抜けません。巨匠・筒井康隆のブラックユーモアな作品に、マイムをベースにした小野寺修二さんの演出が相俟って、なんともシュールな世界が展開されていく、まさに「笑った分だけ、怖くなる」舞台でした。
Report247 【朗読で体験する背筋が凍る恐怖】 阪井真佐子
NHKの朝ドラ『ひよっこ』に出演し、話題を集めた白石加代子さん。独特の表情とセリフ回しが彼女の存在感を一層際立たせています。朗々とした張りのある白石さんの声は、聞くものの耳に心地よく、そしてわかりやすく飛び込んでくるのです。そんな白石さんが、代表作『百物語』に続く新企画としてシリーズ化したのが、今回の『笑った分だけ、怖くなる』です。共演には、これまた怪優・佐野史郎さん。二人の絶妙なセリフの掛け合いは、聞いているものの心にどんどん分け入ってきて、朗読劇を越えた臨場感溢れる世界を体験しました。
第1ラウンドの筒井康隆作『乗越駅の刑罰』は、初めは笑いながら観ていたものの、そのうち背筋にゾゾッとする恐怖が走り始め、「猫スープ」を飲まされる段になったときは思わず口に手を当てている自分がいました。それほどリアルな表現力のあるお二人の怪演ぶりが見事としか言いようがありません。まさに、朗読の魅力の一つである観客の想像力を存分に引き出してくれたようです。
@春日井市民会館(撮影:かすがい市民文化財団)
Report248 【笑い、恐怖そして感動】 川島寿美枝
白石加代子さんの女優生活50周年記念公演『笑った分だけ、怖くなるVol.2』。会場に入った瞬間から、舞台上の大道具、小道具の舞台美術に、この朗読劇の世界に迷い込んでしまったようでした。舞台がはじまると、白石加代子さんと佐野史郎さんの存在感に圧倒されました。そして小野寺修二さんによる演出は、観客の想像力をかき立て、じわじわと心がざわつくような不穏な感じを醸し出していきます。
第1ラウンド筒井康隆作『乗越駅の刑罰』では、主人公の作家と駅員や母、弟とのドタバタ劇の中の笑いが、いつしか恐怖に変わっていきます。駅員のしつこいカラミから救ってくれるはずの母と弟からまでつき離される恐怖。対称的に第2ラウンド井上荒野作『ベーコン』は主人公と亡き母の恋人との静かな会話の中からじわじわと浸み出す恐怖。
幕が閉じた時、恐怖とともにわき上がる感動は、お二人の演技力のなせる技と思いました。
Report249 【プロフェッショナルな朗読劇に触れて】 中林由紀江
北風が冷たく感じられた11月19日に、白井加代子女優生活50周年記念公演の朗読劇『笑った分だけ、怖くなる』を観賞するため、市民会館に行きました。2ラウンド構成になっていて(戦いみたいですね)、第1ラウンドの『乗越駅の刑罰』は話が進む程に段々、理不尽になっていき、見ている私も辛くなるようなお話でした。
共演者は佐野史郎さんだけ。帽子を使ったり、声色を変えたり、エコーを使って声の強弱を変えたりすることで役が立ち替わりました。さらに、トルソーにコートを着せて第三の人物とする斬新な演出もあり、「読書中の脳内がそのまま舞台に飛び出す」感覚を初めて体験しました。第2ラウンドの『ベーコン』は何も無い舞台が、本当に物語の中の草原のように感じられました。
公演後、舞台上に登場された白石さんの「お寒い中、そして貴重な日曜日に足を運んで頂きありがとうございます」という言葉に、真摯なお人柄が感じられました。初めて触れた世界に触発された私は、今後の孫への本読みに熱が入りそうです。