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【FORUM PRESSレポーター】 
朗読劇 司馬遼太郎「燃えよ剣」
~土方歳三に愛された女、お雪~


FORUM PRESSレポーターによる「わたしレポート」。
2015年9月19日(土)に行われた「朗読劇 司馬遼太郎『燃えよ剣』」のレポートです。
FORUM PRESSvol.71にもレポートを掲載しています。Report120はコチラからご覧いただけます。(PDF:8.04MB)

Report121 「朗読と音楽で奏でる“大人の恋”に感動」 紀瑠美

「さすが、大女優!」「一人で全てこなすのだから、すごいわね。男役、女役、ナレーションまで。刀売りの老人の役も見事だったわ」「素晴らしい演じ分けだったわね。土方の時は脚をかっと開いて肩も張り、声も体つきも男らしく、お雪になるとさっと脚を閉じ、しとやかで美しかったわ」「声もよかったわね」
幕間の休憩になると、感想を語り合う声が聞こえてきました。私も心の中で賛同しました。
一部は、お雪と土方の出会いと恋の始まり、二部は、二人の恋と土方の生き様が熱く語られました。頭の中に映像が見えました。十朱さんの迫真の演技に、会場の緊張感が高まっていくのを感じました。
盛大な拍手に送られ十朱さんが退場すると、それまで十朱さんに寄り添うように演奏されていた宮川さんのピアノが高らかに鳴り響き、感動が深まりました。
カーテンコールの十朱さんのチャーミングな挨拶と宮川さんの軽やかなピアノ演奏で、日常の世界に戻していただきました。

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Report122 「新選組は浪漫だ!」 桝田敬子

新撰組隊内に鉄の規律を敷き、鬼の副長として恐れられた土方歳三と、その恋人・お雪の物語を朗読劇『燃えよ剣』で味わいました。ステージ上には五稜郭を連想させる五角形のテーブルと椅子。ピアノの前に、宮川彬良さん。そして和服姿の十朱幸代さんがひとり語り進めます。ただ読む(朗読)のではなく、ナレーターも含め何役も演じ分けます。歳三の時には、肩をいからせ、着物の前がはだけるほどの所作で、一人の男としての土方を、お雪の時には、気品がありながらも、自立した大人の女を情熱的に演じ、死を前にした命を燃やすかのような逢瀬が語られます。十朱さんの中に、いったい何人がいるのだろうと思うほどの熱演でした。最後、歳三は、一人官軍のただ中につっこみ、敵の頭上を飛び越えようとしたところで撃たれてしまいますが、その劇的な跳躍は、目の前にありありと浮かび、今も心に焼き付いています。伴奏のピアノのメロディも、物語の美しさを浮き立たせてくれました。

Report123 「熱い恋物語を聴きました」 かつみ I

五角形の小さなテーブルと木の椅子、そしてグランドピアノだけが置かれたシンプルな舞台。灰色を帯びた白い着物で登場した十朱幸代さんは、一番後ろの席から見ても、凛とした輝きを放っているのが分かりました。十朱さんが一人で土方歳三とお雪と周りの登場人物、そしてナレーションまでこなします。足を少々広げ、握りこぶしを膝に置いた時は歳三となり、体を左に向けて高めの声遣いになったらお雪です。かんざしに手を添えて小首をかしげ「これが恋?」と問うしぐさの、なんと可愛らしいこと。純情一途の恋が進むうちに、艶っぽい場面も何度か登場しました。聴衆であるこちらが気恥ずかしくなる程、なまめかしい描写もありましたが、そこはさすがの十朱さん。「大人の恋」と言われていただけに、品のある色気を存分に聴かせてくれました。宮川彬良さんの奏でるピアノ曲が二人の恋をより激しく切なく盛り立てて、情熱的なクライマックスへと導いてゆきました。

Report124 「ベテランならではの色香薫る一人舞台」 のぐちりえ

グランドピアノと椅子、小さなテーブルしかない舞台に、しっとりとした着物姿で現れた十朱幸代さん。宮川彬良さんの静かで繊細なピアノ伴奏にのせて、十朱さんの一人舞台『燃えよ剣』が始まった。
はっきり言ってしまうと、司馬遼太郎でも新撰組・土方歳三でも、十朱さんでもなく、今回の公演は宮川彬良さんの演奏目当てで観に来た。だが、十朱さんお一人で、「お雪」と「土方歳三」が出会い、そして次第に惹かれ合う二人の様を、情熱的に演じ分けるのを目の当たりにし、十朱さんのその演技力の高さと、その甘美ながらも切ない、色香薫る大人の恋の世界観に、グイグイと惹き込まれた。
印象に残ったのは、お雪と土方歳三が夕日を眺めるシーン。暗幕が開き、夕焼けを思わせる朱色のスクリーンと、お雪と歳三の感慨深げな掛け合いを表現する十朱さんの演技が相まって、その場に実際に居合わせたような気がした。
もちろん宮川さんの演奏は格別で、情緒豊かに奏でられ素晴らしかった。

Report125  宮川あけみ

舞台は、ピアノと椅子と机があるだけのシンプルなものでした。朗読劇とあるのに、こんなセットでいいのだろうかと思ったほどです。でも、幕が上がると、主人公の土方歳三とお雪の恋の話は、十朱さんの語りと合間に流れる宮川彬良さんのピアノ曲で構成されていると知りました。
十朱さんの語る『燃えよ剣』は、俳優たちが演じる姿が見えるほど臨場感にあふれていました。シンプルな舞台だからこそ、声に導かれ音楽に乗り、話の世界に入っていかれたのかもしれません。
新選組の土方歳三といえば、強い男のイメージがありました。恋や愛とは無縁に生きていた男。そんな歳三をお雪の視点から見ることで、この話が実際にあったものだと錯覚させられました。
十朱さんは、この話は「大人の恋」だと前置きをして語り始めました。その言葉通り、多くの人がこの「大人の恋」に魅了されていました。言葉のもつ力をとても強く感じた時間でした。

Report126 「わたしだけが知ってる恋する土方歳三」 伊藤弘子

私は司馬遼太郎さんの小説を読んだことがないし、新選組にも関心はありません。ただ、土方歳三がハンサムだということは知っています。司馬氏の創作上の人物とはいえ、その土方に愛されたお雪を、十朱幸代さんが演じる朗読劇という点に、大いに心惹かれます。
まず驚いたのは着物姿で登場した十朱さんの変わらぬ若々しさ、愛らしさと甘やかな声。
そして舞台左手の宮川彬良さんによるピアノの生演奏。結構濃厚なラブシーンの語りもあり、「おおっ」と思っていると、宮川さんの格調高い演奏がはやり立つ心を静め、また、いやが上にもその後の展開の想像を掻き立ててくれるのでした。お雪は、男性にとって都合のいい、余計なことに口を挟まぬ慎ましやかでありつつ情熱的な、恋人の典型なのかもしれません。でも彼女は、華やかなだけではなく毅然としています。ラストシーンで台本も見ず長いセリフを朗々と披露し、お雪を演じ切った十朱さんの並々ならぬ気迫と技量に息を飲みました。