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【FORUM PRESSレポーター】小松宏誠展 光と影のモビール 空と歌


「FORUM PRESSレポーター」による「わたしレポート」。 市民ボランティアが、かすがい市民文化財団のアレコレを紹介します。 今回は、2024年4月26日(金)~5月19日(日)に開催された 小松宏誠展 光と影のモビール 空と歌をレポート!
photo : Shin Inaba  ©Kosei Komatsu Studio

Report519 【音と光と風のコラボ】みと満寿美
「わお!」最初の作品『雨のうた』を見て、思わず小さく叫んでいました。少し高い雨の音をBGMに、光を浴びてキラキラ光る透明な雨粒。雨の音が次第に激しくなるにつれて雨粒の動きもどんどん速くなり、ますますキラキラしていきます。日本語は自然現象を表現する言葉が豊かで、雨にも春雨、小雨、夕立、初時雨…と微妙な変化を捉えた美しい言葉がたくさんあることを思い出しました。
『海のモビール』もおしゃれで素敵です。美しくカラフルに輝く小さな魚たちが、群れて大きな魚のように見せながらゆらゆら泳いでいるみたいでした。波の音が心地良く、光と風も相まって、まるで透明度の高い海の中にいる気分になりました。 会場には若い人がたくさんいて、スマホ片手に楽しそうに動画を撮っていました。この作品群は写真ではなく断然、動画です。開場前、入口にはすでに列ができていて驚きましたが、それも納得の作品展でした。

Report520 【生きたモビール】雪井 蛍
モビールと聞くと、どんなものを思い浮かべるでしょうか?私は、天井から吊られ、風に揺れるもの。しかし、会場の作品は少し違いました。蝶を模した片羽根が付けられた木が回転するものや、照明が動くことで蝶が羽ばたいているように見える作品も。会場に流れる音楽も自然を感じさせます。『生きているみたい』。お客さんから感嘆の声が漏れます。撮影可能のため、作品に近づき、溶け込むような距離感で楽しんでいました。 印象に残ったのは、クモの糸を使った作品です。額でクモの巣を拾い着色しています。「こんなに美しいのか!」。小さい頃、雨粒をまとった巣がレース模様のようだと感動した記憶がよみがえり、ありのままの自然の美しさにあらためて触れた思いでした。
廃材で作った葉っぱメモがグッズとして販売されていたので購入し、早速、玄関に吊るしました。ひらひらと風に舞う葉は、再び命が宿り、喜んでいるように見えました。
photo : Shin Inaba  ©Kosei Komatsu Studio

Report521 【あたり前の中の美しさ】横井八洲世
入口の先に見える闇の中に、無数のキラキラと光るモビールの円盤が回っています。「何これ?キレイ!」と息をのみ立ち止まると雨と虫の音。「あっ、アスファルトに跳ねる雨粒だ!」。驚きが感動に変わりました。白い羽根を無数に組み重ねて作られた大きなシャンデリア、何百もの光が群れて大きな魚のように見える造形物も、細いテグスで吊られ、宙を泳いでいる。風に揺れ、光と影が織り成す、緻密で幻想的な空間に居ると「五感で感じれば、君も身近な自然に美しさを見出すことができるよ」と、小松さんに肩を叩かれた気がしました。
参加したワークショップでは、45ℓの透明なゴミ袋を振り回し『空気採集』。これが楽しい!膨らんだ袋の端を結んで繋げた巨大な“空気の山”を皆でポーンと投げると、空中にふわりと浮き上がり大歓声。「僕は家で子どもと遊びながらこれを考え創りました」とニッコリほほ笑む小松さんにも、すっかり魅了されてしまいました。

Report522 【光と影、白と黒の美しさ】松葉栄子
会場に入ると、円形のモビールが縦に何個も吊るされてクルクル回り、光の反射でキラキラと輝いていました。自然のクモの巣を利用した作品は、色付けされていて、その複雑さ繊細さがよく分かりました。作り方を紹介する動画も興味深く拝見しました。 ガチョウの羽根で作られた白のモビール、海の中にいるような水色や銀色に光るフィルムのモビール。モビールの動きに同調する音も重なり、どの場所からでも変化のある美しい光景が楽しめました。バランスを取りながらゆらゆらするだけだと思っていたモビールでしたが、そこには芸術、建築、デザインの枠を超えた技術やセンスが溢れていました。入場するお客さんの「すごーい!」があちらこちらから聞こえて、私もこの空間を出るのが惜しい気持ちでした。
実は会期中、会場へ行くと入り口に長蛇の列。2度、入場をあきらめましたが、あの長い列には、この展覧会を複数回見た人もいたでしょう。私のように…。

「ふうせんの雲」の下、入場待ちの来場者

Report523 【ふわふわとキラキラ】山田真由美
作品の数々を観て、会場前で開かれていたワークショップ「ふうせんの雲」にも参加してきました。 45ℓの透明なポリ袋を空気いっぱいに膨らませ、それぞれを紐でつなげて、みんなで大きなふうせんの雲を作るワークショップ。一生懸命走り回って、袋いっぱいに空気を集めた子どもの顔には、汗と笑顔がキラキラと輝いていました。最後に、みんなで空に向かってポーンと飛ばして浮かび上がった時には、自然と大きな拍手が起こりました。これは、小松宏誠さんが、お子さんとコロナ禍にできる遊びとして考えられたそうです。とても楽しくて、私は帰宅後に小さめのポリ袋と細めの糸を探して、ミニふうせんの雲を作りました。
本展では、会場に入った瞬間から、キラキラと輝くモビールの数々に目を奪われました。そこには、光と影と音が合わさった不思議で素敵な世界が広がっていて、ずっと見ていたい、味わっていたいという思いが消えることがありませんでした。

Report524 【モビールが紡ぐ浮遊世界】宮川あけみ
まるで白い藤の花。真っ先に目についたのは、展示室の外に置かれたオブジェでした。近付いてみると、藤の花と思ったのは白い羽根。ガチョウと説明があり、「オブジェじゃなかった。これがモビール作品なのか」と息をのんだ瞬間、ゆらゆらと微かに揺れたのです。お店などに飾ってあるかわいいモビールのイメージはふっとんで、あまりの精巧さに見入ってしまいました。羽根1本1本が丁寧に削られ接着されて、1枚の大きな羽根のよう。組み方も建築物みたいにきっちり作り込まれ、きれいな逆円錐形をしているのに、不規則な揺れが起こる不思議。眺めていて心地良かったです。 展示室内には、さらに手が込んだ大掛かりな作品ばかり。雨紋を表したような透明な円盤や木立を思わせる羽根の連環、水面の煌めきと見間違う光るフィルムを貼った和紙に、自然のクモの巣をそのまま額に移しとったものなど、小松宏誠さんのテーマ『浮遊』の独特な世界が展開していました。

Report525 小松宏誠展 関連企画ワークショップ「ふうせんの雲」レポート【むすんで むすんで】宮川あけみ
集まってきた子ども達を見ると、ワクワクしているのがわかる。「ふうせんの雲」を作ってみようといわれたら、大人も同じ気持ちになる。今回のワークショップのテーマから、どんなものが出来上がるのかまったく見当もつかない―。 隣接するギャラリーで、モビールアート『小松宏誠展』を開催している作家・小松宏誠さんが講師です。使う材料が45ℓポリ袋300枚と聞いて、ただ黙々と手を動かすだけかと思ったら、意外に全身運動!袋を左右に振って空気を集めるのが大変でした。皆で作り終えた300個をひもで結び合わせると、モコモコしたポップコーンみたいな雲が出来上がりました。小松さんの「浮かせてみよう」の掛け声に、子ども達はスタッフさんと一緒に「せーのっ!」。ちょっと重そうな雲だけど、ちゃんと浮き上がってホッ(笑)。「家で作りたい」と話す子もいて、きっと個性的な雲が出来そう。 ゴム風船しか頭になかった私の思い込みも飛ばしてくれた、おもしろい体験でした。