出合ったのは中学３年の時。中学校最後の吹奏楽コンクールを前に、音楽に理解のあった両親が買ってくれた。それも、中学生にとってかなり贅沢な、一般的なものの５倍はする高価なスネアドラムだった。本格的なドラムを買ってもらい、大袈裟に言うと、その時、世界が変わった。「使い込んで自分のものにしたい」と身震いするような衝動を感じた。そのコンクールでの『ドラムセットとコンサートバンドのための協奏曲』の演奏と感動が、音楽で生きていく覚悟を生み、僕の本格的な音楽活動の原点となった。
現在は演奏のほか、介護と音楽をつなぐ活動もしている。これは、ピアノ講師の母が介護施設で音楽療法をするのについて行った経験が大きく、認知症の方が音楽を聴いて生き生きとする様子を目の当たりにしたことが影響しているかも知れない。このドラムを叩き続けてすでに15年が経つ。これからも皮を張り替えながら、良き相棒として僕の音楽人生を支えてくれるだろう。

［取材・テキスト］芳賀倫子（日本自分史センター相談員）
［語り手］鈴木豊大（すずきとよひろ）（打楽器奏者/かすがい市民文化財団若手音楽家支援事業登録アーティスト）